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こまきちのスケッチブック

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2018年 03月 25日

ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~

5/30のDVD&ブルーレイ発売まであと2ヶ月ほどですが、待ちきれません。
取りあえず感想を書き留めておきたいと思います。



監督 : 滝田洋二郎


出演者 : 二宮和也 西島秀俊 綾野剛 宮崎あおい 西畑大吾 竹野内豊


あらすじ 

一度食べたら絶対にその味を忘れないという絶対味覚の持ち主である佐々木充(二宮和也)は、自らの経営する懐石料理店の失敗で背負った借金を返す為、人生最後に食べたい料理を再現する『最後の料理人』として収入を得ていた。
そんな充の元に、中国料理界の重鎮という人物から報酬が大きな最後の料理の依頼が舞い込む。
しかしそれは、かつて満州国に存在したという『大日本帝国食彩全席』のレシピ探しとその再現と言ういささか胡散臭いものだった。
充は気乗りがしないものの、レシピを作ったという山形直太朗について調べ始める…



感想はネタバレを含みます
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この映画、実は12回劇場に足を運んで観たんです。
軽くセリフも覚えてしまうし、何なら印象的なシーンの中国語やロシア語もいくつか覚えました。(発音が合っているかどうかは別にしてね)

この映画、観終わった時には本編で登場した料理を食べたくなります。
登場人物が美味しそうに食べているかと言えばそれは微妙ですが、映像的にとても魅力的なんです。
料理にはキラキラしたBGMを添え、匂いも今にも香ってきそうな気さえします。
おそらく咀嚼音も強調しているのに不快に感じるどころか、興味をそそられさえします。
12回映画館に通うと、その日の気分や時間帯、体調によって映画館から出る時に食べたいと思う料理が違います。
ある日はロールキャベツが、ある日はビーフカツサンドが、ある日は塩鮭や炒飯が食べたくなります。
ええ、飯テロです。
作りましたよ、映画内の手順やパンフレットを参考にしてロールキャベツやビーフカツサンド。
ロールキャベツはコンソメやトマトベースのものよりも個人的には好みでした。(でも、牛ひき肉のみよりは合い挽きで作った方が美味しかった♪)

この料理をニノ演じる充が食べるのですが、ここにニノの演技力の凄さが感じられます。
まずは、宮内省から紹介された割烹料理店「辰巳」の看板料理である豚の角煮を食べます。
直太朗の同僚だった辰巳金太郎さんは既にお亡くなりでしたが、奥様の静江さんから直太朗と千鶴の話を聞き、その後直太朗の得意料理でもあったという豚の角煮を口にします。
その角煮を食べた充は驚きを隠すことをしません。
恐らく、充の想像を超える味だったのでしょう。
その後、辰巳のおかみに紹介された直太朗の助手を務めていたという鎌田に会いに行きます。
そこで、レシピ第一号というアユの春巻きを食べます。
アユを三枚におろすという工程に興味を惹かれて食べますが、「塩が効きすぎですね」と、少々人を食った発言をするのですがこれには直太朗に再三塩を効かせすぎると注意され続けていた鎌田が驚きます。
長野の鎌田の元から帰った充は兄弟のように育った幼馴染の柳澤の中華店でビーフカツを揚げながら愚痴ります。
そこで柳澤の作る炒飯の味が変わった事に気付きますが、実はこれもレシピに載っている炒飯なのです。
この炒飯を食べる時は、素のニノちゃんに近い食べ方を見る事が出来ます。(え?もう飲み込んじゃった?ちゃんと噛んだ?っていう食べ方ね)
その後は、鎌田に紹介された、ハルビンのスラバホテルに向かいます。
ここではダビッド・グーデンバーグ氏に妻である千鶴を亡くした直太朗が、料理に対する姿勢を考え直した話を聞き、充は自分と同じように何かを犠牲にするかのような料理との向き合い方をしてきた直太朗が変わってしまった事に対し失望し、直太朗を見下したような発言をします。
しかし、直太朗がユダヤ教交流会の為に作ったロールキャベツを口にして、たった今見下したはずの直太朗の料理に嫉妬さえしているような複雑な表情をします。
そしてラストではすべてを知った充が、園長の遺影の前でビーフカツサンドを食べます。
母の思い出の味でもあるビーフカツサンドは、充にとっても数少ない母との思い出の味だったでしょう。
ニノがアップで料理を食べる。ただそれだけですが、食べる料理によって全く違う表情を見せます。色々な人から直太朗の話を聞き重ねるうえで変わっていく充の感情を感じ取る事が出来ます。

さて、この映画主演はニノですが、比較的前面に出てくるのは西島秀俊さん演じる山形直太朗です。
何かの雑誌で撮影監督の浜田さんが、ストーリーの性質上西島さんが主演なんじゃないかと感じてしまう観客がいるかもしれないが、最後のシーンで二宮くんがやっぱり主演の映画なんだと感じ取ってもらえたらいいというようなニュアンスの事をおっしゃっていらっしゃいましたが、やはり映画を観終わった後「どうして西島さんとダブル主演にしなかったんだろう?」と感想を言っている女性がいました。
しかし、制作側は断固として主演は二宮、ストーリーの軸は現代と考えているのだろうなぁ…と、私は感じました。
充が、直太朗の話を聞きに歩き、満州時代の映像が流れますが、観客の感情が満州時代の登場人物に共感し引きずられるであろうタイミングを見計らい、絶妙なタイミングでニノのアップを入れ話をぶつ切り現代に意識を引き戻します。
それは本当に絶妙なタイミングで、もどかしくも、苛立たしくさえも感じるようなタイミングでこれは昔話だよと言われている気がしてきます。
千鶴が亡くなるシーンも、直太朗が亡くなるシーンも、観ているこちらの感情が高ぶるタイミングでニノを差し込んできます。

西島さんの演技もとても素晴らしかったと思います。
新しい地で、夢いっぱいやる気一杯の序盤から、徐々にレシピづくりにのめり込み廻りが見えなくなり、そして妻を亡くし自身を見直し、そして真実を知り絶望に見舞われながらも信念を曲げない強い日本男児を演じます。
その妻である千鶴を演じる宮崎あおいさん。
とても柔らかい雰囲気のしかし一本筋の通った芯の強い女性を演じています。
重い雰囲気の満州編の中盤を柔らかい雰囲気で中和していたと思います。
この映画で個人的には共演者の中では宮崎さんの演技に一番心ひかれました。
そして、二宮教の信者である西畑大吾くん。
原作では登場しない映画オリジナルの役になりますが、とても好演していたと思います。
レシピが出来上がっていく段階、皆が喜ぶ中ひとり複雑な表情を時折浮かべます。
どうしてこの子はこんなに浮かない表情をするのかなぁ…と、不思議に思いますがこれもストーリーが進むにつれて分かってきます。
直太朗や楊千鶴たちといる時の無邪気な表情と時折見せる浮かない表情が鎌田の葛藤をうまく表現しています。

そして、主役のニノ。この映画、ニノの役は正直とても難しい役だったと私は思っています。
観客の感情は満州編に引きずられる事だろうし、終盤充にスポットが当たるまでは直太朗の話を聞いて歩きその直太朗のレシピで作られた料理を食べる…この繰り返しで、充の感情の移り変わりをうまく表現しなければ、肝心のラストの展開に説得力が全くなくなります。
派手な作品ではありませんが、良い作品だと思います。

余談ではありますが、12回映画館で鑑賞しましたが、全ての回で観客の涙を誘っていました。
女性だけでなく男性で泣いていらっしゃる方もおられて、あぁ、この映画でニノの良さを分かってくれる人が少しでも増えれば嬉しいなぁ…と感じました。



by rinntyei426 | 2018-03-25 16:54 | 国内ドラマ・映画


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